被災地における被災者・支援者間の情報流通支援システムに関する研究

慶應義塾大学 環境情報学部 4年   尾崎 祥子

概要

災害が発生した後の被災地においては、情報流通の面でも多くの問題が発生する。特に、被災者に対する、生活に必要でかつ細かな情報の伝達には十分な対応ができているとは言えない。そこで本研究は、被災者が必要とするサービスに関する情報の迅速な流通を支援する仕組みを確立し、被災者の生活の質を情報流通の面から向上させることを目的とする。さらにこれを実現するため、被災者や支援者が持つ生活に密着した情報に注目し、個人からの情報収集に焦点を置いた。しかしこの場合、個人による情報の登録である為、同一の事象に対して表現や内容にばらつきを含んでしまう可能性が懸念される。また、内容の信頼性が不明確であることも問題である。
そこで本論文では、まず個人が情報を登録する際の文章に枠組みを作成し、既存のリストから該当する言葉を選択して文を組み立てる方式を提案する。これにより、的確な情報流通に必要な内容の確実な登録と、表現のばらつきの抑制を実現する。また、提供される情報に対して必ず情報源を付加すること、一旦提供された情報に対しての評価や追加情報が他の利用者によって付加できる仕組みを設けることによって、情報がどのような信頼度を持ったものであるかを明らかにし、受け取った個人に対してその情報の信頼性を判断するための材料を提供する。
これら上記の提案を踏まえ、携帯電話を利用してWWW上で情報交換を行う仕組みを実装し、利用者に対する実験を行った。実験では、インターフェースの評価及びシステム全体の有効性に対する評価を行った。実験の結果、入力された情報の内容面において本システムの優位性が見られた。また、画面のデザインや利用者に対する説明が不適切であるなど改善すべき問題があることが指摘されたが、災害時の被災者支援者間の情報流通に対し、全体的に本システムが有効であると考察された。

本文

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