2000 年 10 月

 先月は随分堅苦しいことを書いたような気がするので、 これから暫くの間はできる限りバカバカしいことばかり書くように心がけるつもりです。 土屋賢二の影響も少なくはありませんが、 それよりも単に数年前日記を書き始めた時の調子に戻っただけとも言います。 もし全然笑えないとしても、それはそれで正しいことだと思います。(10/3)


10 月 1 日 (Sun)

 11 時頃、国勢調査の調査員を名乗る女性に叩き起こされてしまう。 半分寝ぼけながらも、昨晩徹夜で書き上げた調査票を手渡して、事なきをえる。

 昨日アップロードした日記 (9/25-30) を、少しばかり修正。 別に内容が大きく変わった訳ではなく、ちょっとした言い回しを変更したり、 発音時のアクセントに気をつけたり、プリントアウトして紙飛行機を作った時、 左右の翼に現れる文字のバランスがよい具合になるよう配慮した程度ですが (一部誇張あり)。


(10/3 忘れていたので追記)
 土屋賢二著『汝みずからを笑え』(文藝春秋) を読了。 相変わらずのユーモア馬鹿エッセイで、 ちょうど今書店で大量に平積みされているはずなので簡単に見つけやすいと思う。 しかし一週間後、果してどうなっているかは知らないが。 様々な雑誌で発表したエッセイを幅広く集めたという本書の性質上、 一つ一つの作品はこれまでの著作のものと比較して短くなってしまってはいるが、 それでも一冊の本としてみて全くテンションが落ちることがないのは、 これまで以上に呆れ返るしかない。


10 月 2 日 (Mon)

 また遅刻してしまった。「今日も寝坊したんですね」なんて、 上司に優しく諭されてしまった。ランチタイムだということで、 すっかり忘れていたと思っていたのだが。事実、僕自身は忘れていた。 その時は食堂にてグラム 1.3 円で量り売りしていたサラダに、 すっかり心を奪われていたのだった。


 ところで最近はあまり御目にかからなくなったが、 以前は「500 円硬貨は使用できません」と誇らしげに宣言しておきながら、 千円札を使うとお釣りの中に 500 円硬貨を紛れ込ませるという自動販売機が、 結構沢山あって困ったものだった。これはどう考えても言行不一致であり、 理解に苦しむ。例えば、英会話が苦手だという人が英語で話しかけられた時に、 「アイキャントスピークイングリッシュ」 と答えてその場を逃れようとするのと同程度に深刻な問題を孕んでいる、 と言えるだろう。

 しかし、律義に百円硬貨を 7〜8 枚もジャラジャラ返してくれる自動販売機も、 これはこれで気の効かないやつであり、困ったものだと思う。 煙草ならば銘柄にもよるが、一箱 250 円のものであれば、 千円札を入れて一度に 4 箱買えばお釣りを全く受け取らずにすむので、 こういった事態を避けることも可能である。 しかし一缶 110 円の缶ジュースを買う場合、 一度に 9 本買ったとしても結局 10 円のお釣りは受け取らねばならないし (10 円ぽっちいらない、という人もいるかも知れないが、 そう言い切れる人は恐らく自動販売機のジュースを買ったりはしないだろう)、 何よりもこれを本当にやってしまうと、 「勢いで 9 本のジュースを買ってしまったが、さてこれからどうしよう」 という後悔の念に打ちのめされ、足腰が立たなくなる恐れがあるから危険である。

 だが何だかんだいっても、お釣りが正しく戻って来さえすれば、 これに越したことはないのだろう。実は今僕の手元には、 どう見ても変造 500 円硬貨としか思えない、 裏も表もつんつるてんの金属板が一枚存在しており、 これをどう処分したら良いものか 2 ヵ月前から途方に暮れているのだ。 こいつを返した自動販売機側にしてみれば、「私はこれ、 500 円分の価値はあると思いますよ」という気持ちだったのだろうが、 例えばこの金属板を僕が実際にコンビニで使ってみようものなら、 気がついた時には後ろに手が回っているという可能性が何と 99 % もあり、 実に物騒な世の中としか言いようがない。しかもこの自動販売機自身も他と同様、 500 円硬貨アレルギーを宣言して何ら憚らないのだから、余計始末に悪い (ならば一体彼はいつ、この 500 円硬貨もどきを手に入れたというのだろうか?)。 そしてこれ、本当にどうしたらいいのだろうか。悩みはいよいよ尽きない。


10 月 3 日 (Tue)

 昨日は「偽造硬貨を使った場合、 後ろに手が回るという可能性が 99 %」という趣旨のことを書いたのだが、 そのあと少し考えてみたところ、「これは、どうにもおかしいのではないか。 なぜ 99 % なのか」といった疑念が払えなくなってしまった。 したがってこの命題についてまるまる一晩、必死に寝ながら考え直してみた結果、 なんと昨日の計算は本当に誤りだったという結論に達してしまった。正確には、 後ろに手が回る確率は高々 50 % 程度にしかならないのだ。 なお残りの約 50 % は、前に手が回ってしまう確率である。


10 月 4 日 (Wed)

 一昨日は「千円札で缶ジュースが 9 本買える」 という趣旨のことを書いたのだが、 そのあと少し考えてみたところこれも間違いであった。 実は 1 本を 110 円として計算していたのだが、今では普通は 120 円じゃないか。 これは、 もはや僕が自動販売機のジュースなど買わなくてすむ身分にあるということがはからずも証明されてしまった、 のではなく単に最近駅の自動販売機で買った紙パック (!) のジュースが 110 円だったのを、 どういうわけか現在のデファクトスタンダードだと勘違いしていただけである。 従って千円札 1 枚では、どう頑張っても 8 本までしか買えないということになる。 しかし元の文章では「一缶 110 円」として断って書いているので、 特に訂正することもないだろう。9 本が 8 本になったとしても、 既に述べた問題にはさしたる影響を与えないし、 偽 500 円硬貨を掴まされたりするよりは随分ましな方である。


10 月 6 日 (Fri)

 W.S.モーム著『世界の十大小説 (上)』(岩波文庫) を読了。 著者が独断で選んだ世界の十大小説を題材にして、 それぞれの作者に対する評伝を踏まえながら論じた書である。 上巻に収録されているのは、以下の通り:

 小説好きならば、恐らくは読んで損はないかと。 かと言って本当に「損はない」という保証もできないのだが。


10 月 7 日 (Sat) - 10 月 9 日 (Mon)

 世の中 3 連休ということになっているらしいが、別にどうということもなし。 通勤電車でのダメージが酷すぎるので、もっぱらリハビリ中。 ということで、「体育の日」なんておならプーって感じですな (まあ下品)。


10 月 10 日 (Tue)

 C 布に存在する某ビル内のカードリーダーは、 今日が休日だとてっきり勘違いしていたようで、 普段は必要ないはずの暗証番号入力を相手構わずに迫っていました。 いやいや、何とも微笑ましい話じゃないですか、たいして実害もないことだし。 でもそれならばいっそのこと、 給与計算の方も休日出勤扱いにして欲しかったのだが。


 急に涼しくなってきたせいか、最近体調が悪い (というわけでもないが、 やや手抜き気味)。


10 月 13 日 (Fri)

 し、仕事 (priority 1) が終らんぞぅ。 確か先週木曜日に「来週中にはなんとかなると思います」と発言したはずだったのだが、 むうぅ。 Windows に対してはすでに妥協した (気分になっている) から、 ある程度不具合が生じるのも納得していた (つもり) なのだが、 まさか RedHat Linux がこんなに気色悪い奴だとは思わなかったぞ。 カーネル以外のパッケージ (主にシステム管理関係) を、 一体どういう思想に基づいて寄せ集めたというのか、(今の所) どうにも理解できん。


 しかし最近になって、 ユーゴスラビアの政権交替騒動やらイスラエルとパレスチナとの衝突やらで、 国際社会的にはいきなり物騒になりましたな。 まるでシドニーオリンピックの期間を意図的に避けていたかのようだが、 それは考え過ぎなのだろうか、それとも本当に……。

 ユーゴのニュースを見聞きした時はほんの一瞬だけだが、 まるで 10 年前の東欧やソ連を見ていた時のような気分になってしまった。 しかしよく考えてみれば 10 年前は「共産主義を捨てて、資本主義・自由主義を」 などといったイデオロギー的錦の御旗が存在していたのだが、 今度の場合はコソボの時に噴出したような民族主義的エネルギーが、 外から抑え付けられてしまったために行き場を失ってしまい、 その結果ミロシェビッチ独裁政権の打倒へと逆流してしまったのではないかと思われる。 もしそうならば、とりあえず一旦は騒乱が収まったからといえ、 実際の所あまり簡単に安心していいもんでもないのだろう、多分。

 一方で中東の方はというと、 ミサイル攻撃やらで見ためにわかりやすい物騒な状況になっているだけじゃなく、 最近続いていた原油価格高騰問題とリンクしてしまうことにより、 世界経済的に深刻な問題を引き起こすという可能性がかなり高い (らしい)。 まあ世界経済といっても実際は、 グローバル・スタンダードを標榜するところの米国市場ということになるわけで、 そうなると現在の米国は大統領選挙を控えて動きづらい状況であるけれども、 自国の経済 (=株式市場) を守るためには、 何としてでも中東情勢を早期に鎮静化させなければならない。 すると当然アメリカは北朝鮮に対しては、 そうとうクレイジーなことをやらないかぎりは強権的な態度に出られる筈もない訳で、 「とりあえず、おとなしくしておいてください」なんて下手に出ているしかない。 こういう状況を予測していたのかどうかは知らないが、 結果として 2000 年度の極東外交は (このままでは) 金正日の独り勝ち。 顧みて我が国はというと、森総理は連日料亭でドンチャン馬鹿騒ぎだというし、 他の御偉方も来年度の選挙やら IT 革命の手柄取りやらいった国内情勢で頭の中が一杯のようで、 何とも空しい限りじゃありませんか。

 ……うむ、結構酔っ払ってしまったようだ。 これでは全く笑えないじゃないか。


10 月 14 日 (Sat)

 W.S.モーム著『世界の十大小説 (下)』(岩波文庫) を、ほぼ 1 週間かけて読了。 こちらで取り上げている作家は、フローベール、ハーマン・メルヴィル、 エミリー・ブロンテ、ドストエフスキー、そしてトルストイの 5 人である。 前半部同様、なかなか興味深く読ませて頂きました。 おかげで満員電車もそれほど苦にはなりませんでしたよ、 と言ったらやっぱり嘘か。


 最近書店に行っても結局何も買わない場合が多いのだが、 これは「わざわざ買ってまで読みたい本がなくなってしまった」というのではなく、 むしろ読みたい本は結構多いのだが実は金銭的に (やや) 余裕がなくて買えない、 というだけである。 最近の新刊書の中には、個人的に読んでみたいものも結構沢山あるのだけれど、 本に埋もれて餓死するわけにもいかんからな……仕方ない、 来月まで我慢するか (「本に埋もれる前に処分しろ」という噂もある)。


10 月 15 日 (Sun)

 どうして休日に限って、天気が悪くなるかねぇ。 別に頼んでもないのにさ。


 NHK スペシャル『世紀を越えて・ロボット』を観たのだが、 基本コンセプトとして「広く、浅く、わかりやすく」といった感じでやっているだろうせいか、 実際に動いているロボットの映像はなかなか興味深かったけれども、 やはり一つの番組としてみるとちょっと平板過ぎるというか、 毒にも薬にもならない無難なものになってしまったような気がする。 まあ、これは別に今回の NHK スペシャルに限ったことじゃなく、 例えば僕の母親も随分前から NHK スペシャルを観た後にしばしば、 「結局は何をいいたいのか、よくわからん」なんて漏らしてたりしてましたしね。

 すっかり忘れていたけれど田中康夫氏、 いつのまにか長野県知事に当選しちゃいましたな。 選挙というものは実際のところ、 如何に気まぐれでいい加減な気分に流される制度であるということが、 よくわかる好例といった気もするが。 しかし田中氏、恐らく青島幸男なんかよりはずっとやり手で、 筋もちゃんと通す御方だとは思いますが、 それでもこの先どうなることやら。 さすがに知事になったというのに、 相も変わらずペリグロ、というわけにもいかんだろうし。 しかし僕のような野次馬としては、 そういうことをこの先も続けてくれた方がずっと面白いのは間違いないのだが。


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Takayoshi OHNISHI
ohnishi@sfc.wide.ad.jp
Last modified: Mon Oct 16 00:29:10 JST 2000