◎研究者/勉強の心得

  1. Efficient Reading を心掛けよう

    Efficient Reading とは、簡単に言うと、「はじめから細かく全部読んでは いけない」ということです。読み物のなかには、くだらないもの、 意味のないものもあります。読むものが自分にとって良いかどうか わからないため、そもそもそれを読む必要があるのか、読むとして どれだけ理解しなければいけないのか、それを見極める必要があります。 全体を読む必要があるのかは、abstract や introduction をさらっと適当に 読んでみればわかるでしょう。細かいところを気にしてはいけません。

    読んでみる必要があるとわかったとしても、まだ細かく読んではいけません。 次に、全体をざっと通して読んでみましょう。 全体をざっと通して読むやり方は、skimming や scanning と説明されます。 不思議なことですが、じっくり1回読むより、さらっと2回読むほうが 理解が深いものです。2回目に読むときには、大きな論旨がわかっているので、 細かいところまで深く理解できるようになります。

    コロンビア大学の冊子などは、英語圏の人が英語の文章を読むための ノウハウを説明しています。これが、我々にとって母国語でない 英語の文章を読むときには、さらに重要になります。 英語も結局は慣れですので、じっくり小量読むより、さらっと大量に 読むほうが上達が速いものです。文章の理解度に関しても、 「自分が今何を読んでいるのか、どこを読んでいるのか」という 全体からの位置を理解しているほうが、深く理解できます。

    最後に、「実際は概要だけわかっていれば良い」ということも多くあります。 さらっと1回目に読んで、それで充分になるかもしれません。また、 さらっと1回読んで、時間がなくなってしまう、ということもあるでしょう。 じっくりと半分しか読めなかったというのと、さらっと1回しか読めなかった というのでは、当然後者が良いでしょう。

  2. 文献を読もう

    世の中には、難しいことを簡単な言葉でわかりやすく説明してくれる 良書があります。高度な専門書だからといって、難解なものばかりでは ありません。読むだけで知識がつき頭が良くなる、素晴らしい本を 読みましょう。

    これまで読んだ本のなかで良かった本、後輩に 聞いた良書などを、 文献リスト にリストしています。 図書館に行って、ちょっとめくってみましょう(次項参照)。

  3. 文献を探そう(図書館に行こう)

    図書館に行って、文献を読もう。人の評価は当てになりません。他人の推薦図書は、 自分で確かめてみましょう。実際に図書館で手に取って、すこし読んでみないと 良い本かどうかわかりません。バイブルのような本を、(自分の研究分野で) 見つけましょう!そして、周りに勧めましょう!

    手当たり次第に本を読むことも、ときには必要です。同じことを 3回別の本で読んだくらいから、自分でもそのことを自信を持って 説明できるようになるでしょう。「それが本当に通説か」を知るために、 良書でないような本をぱらぱらめくってみることも重要です。

    図書館で本を借りて、読まずに返したからといって、誰にも怒られたりは しません。読む読まないに関わらず、がんがん借りることは良いことです。

  4. 論文を読もう

    ACM SIGCOMM、IEEE INFOCOM がとても有名な学会です。それらの学会の プロシーディング、論文誌を読むのはとても勉強になります。 メディアセンターの VPN サービスを利用して慶応大学内のネットワークに VPN 接続し、そこから契約E-Journalシステムを利用すると、ACM Digital Library や IEEE Xplore が利用できます。

    日本では、情報処理学会(IPSJ)、電子情報通信学会(IEICE)が有名です。 こちらは、SFC契約E-Journalシステムの NACSIS-ELS (国立情報学研究所) から取得できるようです。

  5. くじけず挑戦しよう

    世の中わかりやすいことばかりではありません。大学で村井研に入ってから これまでに自分がくじけそうになったことは、大きく三つあります。 「英語」「コンパイル」「数学」です。

    慶應義塾高校という学校で全ての能力を置き忘れてきた自分は、 「英語わからない」ということを 堂々と公言しなまけていましたが、間違いでした。インターネットの研究室に 入っておいて、「英語わからない」では通用しません。誰しも初めはまったく 喋れない・理解できないものです。そして、言語は単に「慣れ」です。 センスや才能ではありません。わからなくても良いから読む、恥をかいても 良いから発言する、といったことが重要です。真面目に英語に挑戦してから、 2〜3年で、それほど不自由はしなくなると思います。逆に言うと、 「僕/私は英語はできない」と言っている時期は、単に無駄です。

    英語を実践する場所として最も簡単なものは、IETFワーキンググループの メーリングリストです。自分が興味を持っているものに関する wg に参加し、 そのメーリングリストのメールは一通余さず目を通しましょう。 過去のメールに遡る必要はありませんが、参加してから流れてきたメールは、 全く意味がわからなくても、必ず目を通し、(間違っていたとしても)自分なりの 解釈をしましょう。初めのうちはとても時間がかかるでしょうが、学部のうちは メールを読むのが仕事と思っても良いです。IETFワーキンググループの次は、 nanog なんかいいかもしれません。

    「コンパイル」に関しても、挑戦の姿勢が大事です。プログラムのソースを ダウンロードして ./configure が通らなかったら、何が問題なのか突き止める 努力をしましょう。あるプログラムがうまく動作しなかったら、ソースコードを 眺めてみましょう。結果的には、ほとんどのものの意味がわからないかも 知れませんが、自分の実力、自分の欠点を常に確認することができます。 たくさんのソースをぼーっと眺めているうちに、慣れて意味がわかってくるかも 知れません。ちょっと変更したら、動かなかったプログラムが正しく動作を はじめる、と言うこともあるかも知れません。ソースコードを開きも しなかったら、この可能性は0のままです。人のプログラムのバグを直せる 人程、頼もしい人種はいません。あわよくばそうなれるようにしましょう。

    最後に、「数学」に関してです。村井研に限らず、「数学は苦手だ」と言って はばからない人が世の中には多くいます。確かに、論文を読んだときに 一番問題となるのは、数式の意味がわからない、などといったことでしょう。 しかし、数式や数学なども、ある種、慣れです。一度「う〜ん」と悩んで 結局理解できなかったものが、一年後になんとなく理解できる、ということは ざらです。このとき重要なのは、初めて「う〜ん」と悩んでみるのがいつか、 ということです。学部一年で悩んだら、学部二年でわかるかもしれませんが、 修士一年まで悩まなかったら、修士二年になってもわかりません。

    言いたいことは、何につまづいたときにも、自分が「ダメだ」と思ってから、 もう少しだけ、努力してみましょう。その努力の部分が、「慣れ」につながり、 いつのまにか「ダメ」じゃなくなっていくものです。

  6. メモを書こう

    人間は、忘れます。論文は、くじけることもあります。何かに気づいたら、 どんな小さなことでもメモを書きましょう。

  7. 論文を書こう

    自分がなにかに詳しくなると、世の中の問題点がみつかり、誰にでも 何かしらの活動ができるものです。それらを論文にまとめる必要も出てきます。

    論文では、日本語の正確さはもとより、論文の体裁が大事になる場合も 多々あります。細かいことを言って堅苦しい話にするつもりはありませんが、 「おいおい、これはやりすぎだろ」というものもよく見掛けます。 間違いは一つも許さない、完全に正確に書け、と言うつもりはありませんが、 知っていれば簡単に回避できる「わかりにくさ」は、やはり回避すべきです。

    斜め読みでも、以下は読んでおくべきです。忘れてもかまいません。 そういう意見もある、ということを知っておくべきです。

  8. 運用しよう

    知識がつき、創作や提案など何かしら活動ができるようになったら、 是非それを運用してみましょう。例えば、タームプロジェクトで何かの システムを考えたら、是非それを rg のみんなが使えるように設定しましょう。

    「右手に研究、左手に運用」という言葉がよくいわれます。村井研はとくに、 この言葉に重きを置く場所です。数学を使って如何に素晴らしい提案をしても、 実世界に応用できなければ、机上の空論に過ぎません。逆に、大して 素晴らしい(新しい)提案でなくとも、しっかり実運用することによって 世の中が良くなったり、新しい概念が発見できたりすることもあります。

    自分が親しい周りの友達の環境を良くしてあげられなければ、世の中を 良くするということはできません。世の中を変えるようなかっこいい研究者に なるために、自分の周りの環境を良くして(改善して)行きましょう。